中東閑雅Chūtō Kanga
ジェッダ・ビエンナーレが映す、新しい中東アートの地図

Art & Culture ・ 14 DEC 2025

ジェッダ・ビエンナーレが映す、新しい中東アートの地図

Jeddah Biennale: New Voices

紅海沿いの港湾都市で開かれる現代美術の祭典が問いかけるもの。

紅海に面した港湾都市ジェッダ。旧市街アル・バラドの石造りの家々が並ぶ一角に、巨大な倉庫を改装した会場でビエンナーレは開催されている。出展作家の多くは30代以下、湾岸地域出身者が中心だ。

テーマの一つに掲げられていたのは「移行期のアイデンティティ」。急速な社会変化のただ中にいる世代が、伝統とグローバル文化の間でどう自己を定義するかを、映像、テキスタイル、彫刻といった多様な手法で表現していた。

ある作家は、祖母の刺繍布と3Dプリント技術を組み合わせたインスタレーションを発表していた。「速さの時代に、あえて手仕事の時間を持ち込みたかった」という言葉は、効率化が進む現代日本のものづくりへの問いとしても響く。

会場を出ると、旧市街の路地に夕方の光が差し込んでいた。この都市自体もまた、保存と再開発のはざまで揺れる、一つの生きた展示空間なのだと感じた。