Architecture & Travel ・ 09 OCT 2025
マスカット、海岸線の建築紀行
Muscat's Coastal Architecture
白い低層建築が連なるオマーンの首都で、光と影の設計思想を歩く。
オマーンの首都マスカットには、際立って高い建物がほとんどない。市の条例により建物の高さが厳しく制限され、外壁は白または砂色に統一することが定められている。結果として、街全体が一つの連続した風景として立ち上がる。
海岸沿いの道をドライブすると、切り立った黒褐色の山々と、白壁の街並み、そして紺碧の海が三層になって視界に広がる。装飾は控えめだが、窓枠や扉には繊細な木彫りやモザイクが施され、近づいて初めてその手仕事の密度に気づく。
この「全体としての統一感」と「近づいたときのディテール」という二段構えの美意識は、日本の街並み保存地区にも通じるところがある。景観を守るというのは、派手さを禁じることではなく、細部への集中を促すことなのかもしれない。
夕暮れ時、モスクの白いミナレットが茜色に染まる様は、何度訪れても言葉を失う光景だった。